【徹底解説】難相場を生き抜くための羅針盤：「切るか握るか」の哲学と億トレーダー平井聡士氏の精密スキャルピング戦略
2023年5月17日に公開されたFXに関する記事は、当時の市場がいかにトレーダーにとって試練の連続であったかを鮮明に物語っています。
日々の値動きに翻弄され、明確な方向感を見出しにくい状況下で、二人のトレーダー、ジュンさんと平井聡士さんがそれぞれの苦悩と戦略を語っています。
本稿では、この記事の内容を深く掘り下げ、難相場を乗り越えるための重要な示唆と、億トレーダーである平井聡士氏が実践する精密なスキャルピング手法について、さらに詳細に解説していきます。
混迷を極める2023年5月の市場：ジュンさんと平井聡士さんの苦闘
記事冒頭で示された5月8日から16日までの獲得pipsの推移を見ると、両者ともに安定した収益を上げることが難しい状況であったことが一目瞭然です。
特に注目すべきは、両者の取引内容の詳細です。
ジュンさんは、5月8日の早朝に大きな損失を被った経験を語っています。
仲値直前にロングエントリーをしたところ、仲値発表と同時に価格が急落し、一撃で300万円以上の損失を出してしまったのです。
仲値通過後のショートがセオリーとされる中で、ジュンさんは「55分に向かう値動き次第では仲値後にロングを当てることもある」と、独自の判断基準を持っていたことを明かしています。
しかし、この日の判断は裏目に出てしまいました。
さらに、その日の追い打ちとなったのは、午前10時10分に発表された日銀の国債買い入れオペ減額のニュースでした。
これを受けてジュンさんはショートエントリーを試みましたが、「英訳されれば海外勢が反応してまだ下がるだろうと思った」という期待とは裏腹に、価格は上昇してしまい、この時点でギブアップせざるを得なかったと言います。この一連の出来事は、当時の市場がいかに予測不可能で、テクニカル分析やセオリーが通用しにくい状況であったかを物語っています。
一方、平井聡士さんも5月10日の米CPI（消費者物価指数）発表で大きな損失を経験しています。
「指標後のボラがある相場はスキャルピングの練習になるし、実力が試されるし、ぜひやるべきと思っています」と語る平井さんですが、この日は勝利を掴むことができませんでした。
彼は指標発表時のボラティリティを積極的に利用しようとする姿勢を示しており、難相場においても果敢に挑戦するトレーダーの姿が伺えます。
指標発表こそが市場の本質を映し出す鏡：平井聡士さんの洞察
平井さんは、「指標を打たずして今の相場は攻略できない」と断言しています。
これは、経済指標の発表時こそが、その時の市場の特性が最も色濃く現れる瞬間であるという彼の信念に基づいています。
やりやすい相場であれば指標後もスムーズに利益を積み重ねられる一方、難しい相場では指標後もその難しさが継続すると分析しています。
5月16日の米小売売上高の発表時を例に、平井さんは当時の市場の難しさを具体的に説明しています。
高値をブレイクしていく場面でエントリーしたものの、価格は上下に激しく揺れ動きながらの上昇となり、ブレイク後もすぐに利益確定の売り pressure に押されて押し目を作るなど、簡単にはトレンドが継続しない状況だったと言います。
「簡単には走らないですね」という彼の言葉には、当時の市場の複雑さが凝縮されています。
それでも平井さんは、「指標をやらずして今の相場を攻略する糸口は見えへん」と考え、今後も指標発表時の取引を継続していく意向を示しています。
時間軸との闘い：ジュンさんの模索と平井さんの確固たる戦略
取引の時間軸についても、両者の考え方の違いが見られます。
ジュンさんは、「動きそうな場面を狙うか、動いたあとに対応するかだと思うんですが、動いたあとの2波目＝さらなるブレイクを狙うとごっつい負けますね」と語り、ブレイク後の順張り戦略が機能しにくい状況であることを指摘しています。
特に、2波を狙ったわずか10分間でその日の利益を全て失ってしまうような経験もしていると言い、ボラティリティが急に消失したり、ノイズの多いランダムな動きに翻弄されたりする市場の特性に苦慮している様子が伺えます。
一方、平井さんは、全体的にボラティリティが低下している中でも、経済指標発表後にはまだボラティリティが存在することに着目し、短期的な値動きに焦点を当てたスキャルピング戦略を主体としています。
ジュンさんも、普段は行わないような長めの保有時間での取引を試みたことを明かしています。
5月16日の欧州時間には、安値ブレイクを狙って15分足でエントリーしたものの、結局ブレイクしても価格が伸びず、2時間ほど保有した後に損切りしたと言います。
彼自身も「僕でさえ、今の相場では3分、4分持つこともある」と語っており、普段のスキャルピング中心の取引スタイルからの変化を余儀なくされていることがわかります。
難局を乗り切るための究極の選択：「切って切って切って」か「切らずに握る」か
このような難しい相場を攻略するためのヒントについて、ジュンさんは非常に重要な示唆を与えてくれています。
それは、「切るか、握るか、どっちかに決めること」という、一見シンプルながらも奥深い考え方です。
ブレイクすると信じてエントリーしても、期待通りに価格が動かない状況が続くと、トレーダーは「切って切って切って」と損切りを繰り返してしまいます。
しかし、損切りを繰り返した末に精神的な限界を迎え、「もう切らんでええか」と安易にポジションを握ってしまうと、今度は容赦なく逆方向に価格が動き出し、大きな損失を被ってしまうという悪循環に陥りがちです。
だからこそ、ジュンさんは「最後まで切り続ける」か「最初から切らないと決める」か、どちらか一貫した方針を持つことの重要性を強調しています。
特に、「切って切って切って」が続くと、どこかで精神的な限界が来てしまうため、どちらの方針を選ぶにしても、メンタルの強さが試される相場であると指摘しています。
彼の個人的な結論としては、「長く持つ」という方針を選択したようです。
しかし、「切らない」という選択も、含み損と向き合い続けることになり、精神的な負担は決して小さくありません。
平井さんも、「含み益の減少もつらい」と語っており、たとえ利益が出ている状態でも、それが減少していくのを見るのは苦痛だと述べています。普段であればすぐに利益確定するような場面でも、現在のノイズが多い相場においては、それを割り切って耐える必要があると言います。
最終的に、ジュンさんは「『切って切って切って』だったら最後まで切る。
切らないんだったら切らない。
最初から決めておかないといけないですね」と改めて強調しており、一貫した方針を持つことの重要性を強く訴えています。
億トレーダー平井聡士氏のスキャルピング手法：2pipsに魂を込める精密な戦略
記事後半では、2022年5月6日に公開された過去のインタビュー記事から、平井聡士氏のスキャルピング手法が詳細に解説されています。
平井氏のトレードスタイルは、高ボラティリティの時間帯に、水平線を意識した極めて短期的な売買を繰り返すというものです。
平井氏がトレードを行う上で最も重要視しているのは、ボラティリティの高さです。
「上がる・下がる」の方向性よりも、「ボラがあるか否か」を重視し、値動きが活発な時間帯に絞って取引を行います。
水平線を羅針盤とするスキャルピング
平井氏が水平線を引く基準は、直近の高値・安値、特に何度もサポートやレジスタンスとして機能した価格帯です。
さらに、「126円ちょうど」のようなキリの良いラウンドナンバーや、「126円50銭」といった末尾が「50」のレートも重要な水平線として意識しています。
チャートに引いた水平線の内側にローソク足が存在する間はレンジ相場と判断し、積極的に取引を行うことはありません。
平井氏の狙いは、ローソク足が水平線に近づき、それをブレイクする瞬間、または水平線で反発する動きを捉えることです。
ブレイクアウトを狙う場合は、ローソク足が水平線の近くまで上昇してきたら身構え、抜けると思えばロング、反発すると思えばショートのエントリーを行います。この判断は、一瞬のプライスアクションから行われると言います。
水平線での攻防に決着がつくと、大きな値幅が出ることが多いため、そこを狙って利益を上げています。上手くいけば、数秒で2～3pips程度の利益を獲得できるそうです。
午前9時過ぎの攻防：高値ブレイクに賭ける
平井氏が具体例として挙げているのは、午前9時過ぎの米ドル/円1分足のチャートです。
午前9時以降はボラティリティが高まりやすい傾向があるため、彼にとって重要な取引時間帯となります。
この日の大きな流れは上昇方向であったため、平井さんは高値を上にブレイクしていくところをロングで狙っていました。
狙いは見事に的中し、最初の高値ブレイクアウト直後に7pipsの上昇、さらに新たな高値のブレイクアウト後にも3pipsの上昇を捉えることに成功しています。
「2pips取れれば御の字」という平井さんにとって、これは十分なボラティリティであり、利益確定のチャンスとなります。
仲値前後の職人技：ティックチャートを駆使した柔軟な対応
午前9時55分の仲値前後の値動きは独特であるため、平井さんは水平線だけでなく、プライスアクションもより一層注視し、上下双方に積極的にトレードを行います。
彼はこの時間帯の取引を「職人技に近い」と表現しており、高度な技術と経験が求められることが伺えます。
平井さんのメインチャートは1分足ですが、エントリーのタイミングなど、より細かい値動きを確認する際にはティックチャートも参考にします。
ティックチャートを見ることで、1分足の中の動きをさらに詳細に把握することができ、「ティックが同じレートで3回叩かれて超えられなかったから売りだな」、「ティックがダブルボトムになっているから買いだ」といったように、より精緻なエントリー判断を行うことができるのです。
リスク管理の徹底：損切りは1pips未満
スキャルピングにおいて、利益を積み重ねるのと同じくらい重要なのがリスク管理です。
平井さんの損切り幅は、驚くほど狭く、ほとんどが1pips未満です。
2pipsの損失が出た場合は「絶望的」、「うわ、めっちゃ食らった！」と叫ぶほど、損失に対して非常に敏感であることがわかります。
これは、小さな利益をコツコツと積み重ねるスキャルピング戦略において、一回の大きな損失がそれまでの利益を帳消しにしてしまうことを防ぐための、徹底的なリスク管理の表れと言えるでしょう。
結論：難相場を生き抜くための二つの教訓
2023年5月の難しい市場環境におけるジュンさんと平井聡士さんの経験談、そして平井聡士氏のスキャルピング手法の詳細な解説から、私たちが学ぶべき教訓は少なくありません。
まず、ジュンさんの言葉にもあったように、予測不可能な相場においては、「切るか握るか」という一貫したトレード方針を持つことが、精神的な安定を保ち、結果的に損失を抑えるために非常に重要となります。
自身のトレードスタイルやリスク許容度に合わせて、どちらの方針を選択するにしても、それを最後まで貫き通す強い意志が求められます。
そして、平井聡士氏のスキャルピング手法からは、緻密なテクニカル分析、特に水平線を意識したプライスアクションの観察、高ボラティリティの時間帯への集中、そして何よりも徹底的なリスク管理の重要性を学ぶことができます。
彼の「2pips取れれば御の字」という考え方は、短期的な利益を積み重ねることの重要性を示唆しており、焦らず、着実に利益を積み上げていくスキャルピングの本質を捉えていると言えるでしょう。
難相場は常に私たちトレーダーを試しますが、このような先人の知恵や戦略を参考に、自身のトレードスタイルを磨き上げていくことが、市場で生き残るための唯一の道と言えるのではないでしょうか。